どうぶつ村は人と動物が共生するためのルール作りの基盤を作り上げていきたいと考え、福岡市東区を拠点に
地域ボランティア活動やドッグランの整備を進めております。

理事長エッセイ 敗血症からの甦り 第4章「非常事態」

水が欲しい

記憶では3日ほどで窮地を脱して食事も出るようになったが、3食の食事は(はし)をつけるだけで(のど)も通らない。
何も食べれないのに体重だけは減るどころか増え続けた。
腹水がたまって体重を重くしている。
『腹水の中で肝臓が泳いでますよ』
先生の説明も冗談もむなしく聞こえるのみ。
ずいぶん昔病院に見舞いにいくと、医者が『腹水がたまってきましたから、あと、もって1,2週間でしょうね。』と言うと、おおよそそれくらいに患者は危篤(きとく)(おちい)る。
腹水を抜くための利尿剤と水分の摂取(せっしゅ)制限がはじまった。
無性にのどが渇き、砂漠の旅人に近い。
最初は水差しでの給水から自分で飲めるようにもなったが、看護師さんの非情とも聞こえる言葉が耳に響く。
『500mlのお水1日1本が目安となります。』
『飲んだらボトルに線を引いて飲んだ1回の量が判るようにして下さい。』
『水が減っているのに線がありませんよ』
『きちんと記録してください』
ガンジガラメの状態で自分が飲んだ量を記録できる状態ではない。
減った分が飲んだ量よ。ここは監獄(かんごく)か。ガス室か。(腹水のせいですごい量のガスが室内に充満していた)

ガス室事件

お腹の中に溜まっていたのは腹水だけではなく、前述のようにガスも溜まっていた。
自分でも臭くて、1階の売店から消臭スプレーを買ってきてもらったつもりだったが、残念ながら、病院の売店には一般家庭のトイレで使用するような臭い消しタイプの消臭スプレーは置いてなかった。
手元にあるのは匂いによって臭いを抑えるタイプだったので、ガスが出るたびにシュッシュしていたら、まさしく臭いの混合ガスで部屋の中は充満していた。
そのような折、検診で入室してきた看護師さんが、入ってくるなり窓上部の排煙窓をボタンひとつでバタバタバターンと明け放ち、入り口ドアーを全開で換気を行った。
多少寒かったが、風とともに臭いは消え去った。
翌日も同様、室内にはガスが充満していたので、新しい看護師さんに前日の状況を思い出し、排煙窓の開放をお願いしたら言われた。
『この窓は非常時以外、開放できないのです。』
「ん・・・」
なるほど昨日は非常事態だったのだ。

次章、うなぎ登場。
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