どうぶつ村は人と動物が共生するためのルール作りの基盤を作り上げていきたいと考え、福岡市東区を拠点に
地域ボランティア活動やドッグランの整備を進めております。

コラム(番外編)理事長の湧出石 Part8

 ゴールデンウィーク初めの祝日、とあるゴルフ場の玄関先。
プレイが終わり車に道具を積み込もうとしていると、ゴルフ場のスタッフが数名、玄関先の植え込みのところでワイワイガヤガヤしている。
ふと覗いてみると、植え込みの中に"ウリ坊"がいて餌をもらっている。
一人はロープを手に、もう一人は段ボール箱を持ち、餌でつり、捕獲しようと言うわけである。 

あまりにも"ウリ坊"の可愛らしさに、スタッフ全員楽しそうに作戦を展開している。
話を聞くと数日前、親から離れクラブハウス近くでお腹空かしてうろうろしていた子に誰かが餌を与えて懐いてしまったとのこと。

さすがにゴルフ場で猪を飼うわけにはいかないのだろう、少し離れた場所で放したところ、お腹を空かしたのか舞い戻ってきているとのこと。 Mダックス犬くらいの大きさで、愛くるしい目は完全に人を恐れていない目つきである。
「首輪つけて、誰か連れて帰ったら?」などと他人事みたいに喋っていたら、そばにいた一人の客が『どうするの?』。
(スタッフ)『遠くに連れてって放します』。
 その客、何かぶつぶつ独り言のように喋っていると思ったら、いきなり近くにあったホウキを握ると、こん身の力を込めその柄を"ウリ坊"めがけ振り下ろした。
「ブヒィ〜ーーーー。。。」
一瞬、何が起こったのか、周りにいる人は唖然として立ち尽くすだけで、凍りついたような時が流れた。
悲鳴とともに、倒れたウリ坊は腰を打たれたようで、動かない下半身を前足だけで引きずるようにして、植え込みに逃げ込んだ。
その客は、何もなかったかのように平然と車に乗り込み、さっさと帰って行った。
後が大変である。いきなり死ぬ目に合わされた"ウリ坊"は、ショックでもう人には近づこうとはしない。無理やり箱に押し込み、車に乗せてスタッフが連れて出た。
与えられたショックで人に近づくことはなくとも、障害の程度によっては自然の中で生きてはいけないだろう。

その客がどのような思いで、"ウリ坊"に手を掛けたのかは、いくつか思いつかないでもないが、周りに子どもなどがいた状況で、もし、その客が何度もホウキを振り上げたのであれば、私はその客に飛び掛っていただろう。
 猪は人に食べられる為にこの世に生まれてきたわけではないのに、中には食肉とだけしか考えていない人もいる。



一度、ハワイでカジキマグロを釣ったことがある。船にあげる前にバットで叩いて殺す。船に揚げられたカジキは、身体を痙攣させながら牛ほどの大きな目からポロポロ涙をこぼす。死んだカジキは海の色と同じマリンブルーの身体がだんだん黒く変色していく。
以来その釣りは私には二度と出来ないし、やろうとも思わない。

ゴールデンウィークの最後の日、ドッグランは多くの犬で賑わった。
ペットとの付き合い方も飼い主によっていろいろあるが、近くの国では、いまさらながら犬を食する文化を衛生的に認めようとする報道が先般流れていた。
新緑みずみずしい中、生と食について考えさせられた今年のゴールデンウィークであった。

 
コラム&エッセイ一覧ページにもどる