どうぶつ村は人と動物が共生するためのルール作りの基盤を作り上げていきたいと考え、福岡市東区を拠点に
地域ボランティア活動やドッグランの整備を進めております。

理事長エッセイ 敗血症からの甦り 第5章「病室」

うどん

食事を全然受け付けないので栄養士が心配して様子を見に来た。
『少しでも入りませんか』
『何か食べたいものありませんか』
汁物(しるもの)がないので麺類(めんるい)だと入りやすいのですが。
『それでは麺類をつけましょう』
朝食以外には必ずうどんか、素麺(そうめん)がついてくるようになった。
しかし麺が伸びないための配慮からか麺とお汁が分けてあり、麺にかけて食べるのだが別にお吸い物までついてくる場合が多かった。
うどんにお吸い物まで要らないと思うが。
栄養士に一 (じゅう)(さい)の講義をしたらほかの栄養士にも聞かせてくださいと後日またぞろ連れてきた。

眠れぬ夜

2週間ほどたつと痛みも少しは楽になり、昼間からウトウトするようになった。
その分、夜になると睡眠導入剤(どうにゅうざい)を使っても3〜4時間ほどしか眠れず、2時過ぎ位から薄っすらと夜の明ける6時まで眠れず、映画を見ても目が疲れるだけで、ただただ天井を見つめる夜が何日かあった。
自分だけが眠れないのも人間しゃくにさわる。そんな時は誰でもいい、(しばら)く会ってない者共に犠牲になってもらおう。
中洲で長くスナックを夫婦で営業し、今は店を閉め富山にいる「 謙瑞(けんずい)」という男に電話した。

「もしも〜し」
『ハイ、エ!楢崎さんですか』
「そうだよ、俺だよ。元気か?」
『どうしたんですか』
「いや〜、いま病気で入院しててな。敗血症という病気でな。」
『大丈夫ですか?声が良く聞こえないのですが?』
「そうだった、酸素マスクつけたまま話してた」
それも夜中の2時過ぎに。彼、昔は遅くまで店やってたから起きてんだろう。
勝手に納得する。他人迷惑もここまでなると、完全に病気。

うなぎと果物

20日ほどたつと、見舞いに訪れる人とも会って少しは話が出来るほどになってきた。
行きつけの料理屋の店主、佐藤さんから電話があった。
謙瑞(けんずい)から電話があったよ。楢崎さんが大変みたいよと。』
『見舞いに行くけどさ、“うなぎ”食べる?』
何日か後に“うなぎ”と果物(くだもの)を持って見舞いに来てくれた。
もともと嫌いではないし、せっかく持ってきてくれたからと“うなぎ”を半切れ、口に運んだ。
やっぱ娑婆(しゃば)の味はいいネ〜
結果は翌日すぐに出た。
『楢崎さん、血尿が出ていましたよ』
「スミマセン。“うなぎ”食べました」
『・・・・・・・。』
『エー?うなぎですか〜』
先生もあきれて何も言えない様子だった。
しかし罰はそれから転院先まで背負うこととなる。

カリウム減らしの“あんこ”で。

次章は医療についてです。
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